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Author:テンポスタッフ
東京都杉並区西荻窪にて新装開店の中野書店です。

インターネット販売と、年3~4回発行予定の目録「古本倶楽部」を中心に書籍販売をしております。

また、2015年3月より毎土曜日は閉架式にて書籍をご覧いただけます。
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ヘレン・ケラー最初の邦訳書ほか4点

聖女ヘレンケラー
園田基彦編著『聖女ヘレン・ケラーとはどんな人か』森田書房、昭和12年

上掲、<アメリカの文豪マーク・トウエンは、嘗つて、「十九世紀の奇蹟は、ナポレオンとヘレン・ケラーである」と喝破した>を枕とする序文でヘレン・ケラーを紹介した園田基彦編著『聖女ヘレン・ケラーとはどんな人か』(森田書房、昭和12年4月)は、月刊読物雑誌『話の王国』を刊行していた森田書房の出していた冊子の一つ。この冊子(パンフレット)は、<一般大衆の時局指導書>として駅の売店やスタンド、有名書店に置かれていたようで、かなりの冊数が出回っているはずであるが、全貌は窺いしれない。谷孫六『生きた富豪術』『金作りの秘訣百ケ条』、永松浅造『超非常時を背負つて立つ人々』『近衛内閣・閣僚の全貌』、島影盟『怪教「ひとのみち」を裁く』『霊魂物語―死んだらどうなるか?』、天草平八郎『正力松太郎と小林一三―如何にして今日を築いたか』等の諸書が出版されている。



わが生涯楽天主義
ヘレン・ケラー、皆川正禧訳『わが生涯』内外出版協会、明治40年
ヘレン、ケラー、塚原秀峰訳『楽天主義』明治40年、再版

上記のマーク・トウェインの言葉は、ヘレン・ケラーの自伝『わが生涯』(The story of my life)に併載された「ヘレン・ケラーの生涯と教育に関する補遺」に収められた一節で、当時、同書の宣伝文句にも使われていた言葉。当地アメリカでは、出版翌年の1903年には既に発行部数1万部を数えるほど流布した本であった。書中、ヘレン・ケラーは、マーク・トウェインの作品を愛好していたと語り、また、彼と邂逅し、直接、口づから作品を読んでもらう機会に接したことが述べられている。
同書の本邦の初紹介は、おそらく皆川正禧訳『わが生涯』(内外出版協会、明治40年5月)であろう。出版書肆である内外出版協会は、スマイルス『職分論』『品性論』『勤倹論』『自助論』やフェリックス・アドラー『人道と天道』の訳書を刊行するなど、人生如何に生くべきかの指南書の一環として『わが生涯』の刊行を試みたものであろう。スマイルス『自助論』は、中村正直の『西国立志編』の題で知られる書で、原題は『Self-help』、つまりセルフヘルプで、当代各名士の成功体験談を通じて、自分の生きる道を探る書であったことは周知の通り。
『わが生涯』を印行した内外出版協会は、同書に先立ち、ヘレン・ケラーの『楽天主義』(塚原秀峰訳、明治40年4月)を刊行している。同社の書籍紹介に見える『楽天主義』の項では、<米国思想界の明星>ヘレン・ケラーは、この書の出版後〔1903年〕、名声が高まり、あまねく文学界の認識するところとなったと喧伝されている。



ヘレンケラー小伝
ヘレン・ケラー女史歓迎委員会編『ヘレン・ケラー小伝』平野書房発売、昭和12年

話は前後するが、ヘレン・ケラーは計3度、来日している。最初の来日は、昭和12年(1937年)のことであった。この来日は、三省堂の岩橋武夫監修「ヘレン・ケラー全集」全5巻(昭和11-12年)の出版に合わせてのことと推断される。昭和12年4月中旬に到着し、2ヶ月半にわたって内地はもとより満鮮各地を巡回講演して回る予定であったという。この来日に即して、ヘレン・ケラー女史歓迎委員会(代表・原泰一)編『ヘレン・ケラー小伝』(平野書房発売、昭和12年4月)という60頁の冊子が頒布されている。無論、先の森田書房の冊子も来日の報を耳にし、急遽編まれたものと思われる。ヘレン・ケラーは、かくして、全国の県や市の教育会や盲聾啞学校、婦人団体、社会事業団主催の会に招かれ、講演行脚を続けるが、7月の支那事変勃発を受け、帰国の途に就いたようである。

蛇足ながら、ヘレン・ケラーと云えば、サリヴァン先生と出会い、「ウォーター」という言葉を最初に覚える情景が印象深い。もちろん、『わが生涯』にもその挿話が触れられている。しかしながら、戦前の出版にかかる『ヘレン・ケラー小伝』にも『聖女ヘレン・ケラーとはどんな人か』にも、サリヴァン先生の章はあるものの、その場面は触れられてもいない。映画『奇跡の人』(1962年、日本公開1963年)やその舞台によって広く知られるようになった一面であろうか。(燈台守)
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